チンギス・ハーンの国ではプリウスよりウマが高いこともあるらしい【世界一周4日目】

いきなり出くわしたパワーワード

旅行をしていると、忘れられないパワーワードに出会うことがある。

「ゲル周辺の移動は、ウマか、プリウスか、選べます」

モンゴルの旅行会社にホームステイを申し込んだ際、メールにあった一言が、なかなかパンチが効いていた。クルマではなく「プリウス」と指定されているのも気になる。モンゴルの首都・ウランバートルに着いてから理解した。道を走っている車の大半がプリウスなのだ。なぜこんなにプリウスが多いのか?

ガイドさんに理由を聞いてみると、もともと日本車は壊れにくいうえに、プリウスは燃費もよい。多く走っているのでパーツが手に入りやすい。だから故障しても乗り続けられる…とのこと。ニワトリが先かタマゴが先か分からないけど、圧倒的にシェアが高い分コストパフォーマンスがよいのか。たしかに市内にはプリウス専門修理店も見かけた。

「プリウスより高いウマもいます、血統がいいウマです」

意味が分からない。だけど、そんなにウマは貴重なのか。なぜウマがプリウスより高くなるのか。一応ロジックを聞いてみると「ウマは子どもを産むので増やせるから」ということだった。

「だって、プリウスは子どもは産まないでしょう?」

たしかに、と納得した。

モンゴル人ガイドさんが語るウマの強み

続けてガイドさんは言う。

「ウマは頭がいいです。ヘタな人が乗ると分かります」

そう言われると、無表情に見えていたウマが、なんだか自分に合わせてくれているような気がする。そういえば「ウマが合う」という諺もあるほどだ。モンゴルのウマはいわゆるポニーの仲間で、サラブレッドのように大きくはないが、身体的にも精神的にもタフらしい。

モンゴル人は、このウマで世界の3分の1を制したのです」

ドキッとした。ゲルに滞在中、一緒に乗馬したガイドさんがふいに放ったこの一言も、きっと忘れられないパワーワードになるに違いない。ウマに乗ると時間がすぐに流れ、どこまでも行ける気がしてしまう。それで900年前、本当に行けるところまで行ってしまったのが、あのチンギス・ハーンなわけだ。

ウランバートルへの帰路、チンギス・ハーン像に寄る

2泊3日で同伴したガイドさんは「用事ができた」と言って2日目にいきなり姿を消したりと、ツッコミどころもあったのだが、カタコトの日本語を操り、おかげで充実したホームステイを過ごすことができた。帰りには時間を作ってチンギス・ハーンの巨大像にも寄ってくれた。

ウランバートルへの帰り道で放った一言も紹介したい。目の前を古いロシア製のワゴンが走っていた時のこと。

「ロシアのクルマも頑丈です。でも、人が乗ることを忘れています」

おそろしあ。そんなわけでウランバートルで一泊し、次はロシア・モスクワに向かう。