新明解国語辞典の第8版が先月発売されて気になっていたのだけど、ちょうどある文章の校正を進めているのもあって買ってみた。紙の国語辞書を買うのは、おそらく中学受験前に塾に通い始めた小5以来、20年ぶりのはず。
三浦しをんさんの「舟を編む」などの小説で知られている通り、新明解は編者の主観がたまに見え隠れして、辞書なのにキャラが立っているとされている。特に概念的なキーワードについて、きわどい説明が多い。
有名なのは第4版の「恋愛」で、「特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態」とある。
「合体」という記述は物議を醸したのか、自分が小学時代に買った第5版では削られている。それでも当時、勉強に飽きるとマセた言葉を調べてドキドキしたような記憶がある。中高生の頃にケータイを持ち始めた平成1桁の我々が、思春期の入り口の悩みや分からないことを辞書に託した最後の世代な気がする。
その辞書が新明解だったせいで癖のある価値観に染まった可能性が否めないが、親にも先生にも聞けないことをこんなロマンチックに教えてくれる存在がいたのは、幸せだったんじゃないかと。Googleに聞けば何でも答えてくれるが、1つ1つの答えが味気ない時代になってしまったからこそ、そう感じる。
ちなみに第8版の「恋」はこう。「特定の相手に深い愛情をいだき、その存在が身近に感じられるときは、他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足感・充足感に酔って心が高揚する一方、破局を恐れての不安と焦燥に駆られる心的状態」
これまでは「特定の異性」と表記されていたのが、多様性への配慮から「特定の相手」に改められているらしい。なるほど。他にも1500語が追加されて、第8版はこれまでで一番ページ数が多いらしい。しばらく暇つぶしにめくってみようかと思う。
とはいえ、30過ぎた男が夜に国語辞典で「恋」だの「愛」だの調べるのは危ないので今日はこれぐらいにしておく。ちなみに「危ない」を調べてみると、①生命や身体の安全が保てないおそれがある様子、②よい結果に至るとは期待できない様子、③危機的状況が迫り、今にも最悪の結果を招くおそれがある様子、とあった。
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