群馬県の宣伝部長「ぐんまちゃん」はなぜゆるキャラGPを勝てたのか?首相4人を輩出した保守王国ならではのマジな「選挙地盤」

戦後首相を4人輩出した群馬県

 ぐんまちゃんは2014年のゆるキャラGPで、2位のふっかちゃんに10万票の大差をつけて頂点に立ったんだけど「なぜそんなに強かったのか?」というのを考えていくと、首相を4人輩出した保守王国ならではの地盤があったと思わざるを得ない。

 まず「候補者調整」。ゆるキャラGPは夏にエントリーが始まるんだけど、どの自治体もバラバラで立候補するので票割れの原因になる。群馬がすごいのは、県が主導して「まずはぐんまちゃんを勝たせる」という明確なプランを示して、ほとんどの市町村がそれに応じている。

 つぎに「後援会作り」。ゆるキャラGPは1日1票、スマホから投票する仕組みで、どうしても行政職員だけでは数が足りない。そこで県内の業界団体に協力を仰いで、建設業組合などがネットサポーターとして組織票を投じるようにした。ぐんまちゃんはつぶらな瞳だけど、見えないところでは土建屋とは密接な関係にある。

 そして「利益誘導」。県内企業はぐんまちゃんの版権を無償で使えるようにして、ブリーフや耳かきまで数百種類のグッズを作った。GP優勝後は、年1回のイベント(誕生日会)に全国から有名キャラクターも参加するようになり、県内市町村の無名のマスコットが、くまモンやさのまると並べるようにした。

ついにアニメ化することに…

ついに県庁前に石造までできてしまったぐんまちゃん/群馬県前橋市

 今年度予算では1.6億円をかけて、ついにアニメ化するらしい。ぐんまちゃんのファンとしては感慨深いのだが、これ以上有名になってしまうことに不思議な寂しさ、不安もある。2月22日はぐんまちゃんの誕生日で、さっきまでオンライン誕生日会をYouTubeで見ていて、そんなことを感じた。

 個人的にはブームが去っても、子どもが毎年年賀状を出したくなるような、細々と愛されるキャラクターでいてほしい。老人ホームでずっと無表情だった認知症のおばあさんが、イベントに来たマスコットとハグした途端、久しぶりにニコッと笑顔を見せるような、そういうやりとりに本来の役割がある気がしている。