勇敢なマサイの戦士たち
マサイ族は今でもライオンと戦うらしい。ただ、マサイ全員が戦うわけではなく、ライオンと戦うのは「戦士」と呼ばれる一部の人たちなのだと。マサイの中にはワイシャツにズボンという現代的な格好をしている人もいるが、戦士は今でも民族衣装を着ている。
それにしても、いきなりライオンと戦って勝ち目はあるのだろうか? マサイの一人が言うには、「子どもの頃から、小さな動物を殺して慣れていく」のだと。ハイエナであれば「子どもでも、ハンマーで頭を叩けば普通に殺せる」らしい。あとは、近づくのが危ない動物は、槍を使ってしとめるのだそうだ。
日本のことを教えてくれ
逆に日本のことを教えてくれとも言われた。「何か歌をうたってくれ」と言われ、とっさに思いついたのが「故郷」。歌詞は伝わらなくても、メロディが分かれば何かを感じてのではないかと思ったが、マサイ側の反応はいまいちよくなかった。「日本にはレゲエはないのか」というようなことを聞かれた。最近、レゲエが流行っているらしい。さすがアフリカである。
真面目な話もしてくれた。たとえば、「白人が来てから、マサイ族は弱くなった」と。昔は、ハーブを使ってお母さんが作ってくれる薬が何にでも利いたのだそう。それが、白人が持ってきた薬を飲むようになってから抵抗力が落ちてしまったと。人間が持っている本来のパワーを出せなくなったというようなことを言っていた。
「昔のほうが、世界は広かった」とも言っていた。地平線の向こう側から白人たちがやってくるまで、自分達には「政府」も「国境線」もなかったと。「あの山の先がどんなところかは分からない」からこそ「遠くに行ってくる戦士は勇敢だった」し、「世界はもっと広くて、夢があった」と思えたという。
立ちションをしていたら笑われた
立ちションをした後、マサイに笑われた。なんのことか分からなかったのだが、どうやら自分のモノを見て笑っているらしい。「そりゃ、アフリカサイズには敵わないよ」と思ったのだが、そういうことじゃないらしい。
「日本人はサーカムなんとかをしないのか」
というようなことを聞かれた。このサーカムなんとかを電子辞書を引くと「割礼」のことだった。なるほど、切っていないから笑われたわけだ。
「今ここで切ってあげようか!?」
一瞬冗談かと思ったが、目がマジだった。どうやらマサイ族にとって、割礼を経ていないのは信じられないことらしい。頼んでもいないのに、地面に枝で絵に描いて教えてくれたのだが、要約すると、余った皮を普通のナイフで除いてしまうらしい。
「痛くないのか」と聞くと、笑顔で大きく頷かれた。みんな泣くらしい。
「我慢できなくなったらどうするのか」と聞くと、と当たり前のように返された。
「痛いときは、走ればいいんだよ」
さすが陸上の国だと思った。